コラム

今週の内外政治経済金融情勢の展望

 新年明けましておめでとうございます。本年もなにとぞよろしくお願い申し上げます。新春の本コラム更新が遅れましたことをお詫び申し上げます。本年が皆様にとりまして幸多き1年になることをお祈り申し上げます。

 算命学総本校高尾学館学長中村嘉男師の解説にしたがい、2008年縁起を示す。2008年は干支暦では「戊子(ボドのネ、またはツチノエのネ)」の年にあたる。「戊(ツチノエ)」は、中国の五行説における木性、火性、土性、金性、水性の5要素の「土性」の「陽」にあたる。
 「戊」は草カンムリをつけると「茂」となり、樹木や草木が大地を一面に覆っている状態を意味する。過去のしがらみが国家や企業、家庭において、雑草のように覆いかぶさり、動きの取れない状態を示している。
 十二支の「子」は、算命学では「北方」、「陽の水性」の意味になる。陽の水性が意味するのは、変化、波乱、海外、そして智恵となる。「子」の文字は、エネルギーに満ちあふれた、小さな子供という意味である。新しい生命力が足下に生まれつつあるという暗示を持っている。

 「戊子」は陽の干支になるが、陽の干支の年は海外の問題、陰の干支の年は国内の問題に焦点が当たりやすい傾向があるとされる。2008年は海外の問題に焦点が当たり、大きく揺れることが示唆されている。
 2008年は過去のしがらみや問題点に光が当たり、それらが整理されるなかで変化や波乱が生じ、新しい潮流が生み出される年ということになる。2008年には総選挙が行われる可能性が高まっているが、政治の世界においても、新しい潮流が生まれる可能性が示唆されている。

 算命学は50年で一巡する時代を、25年ずつの「陽の時代」と「陰の時代」に区分する。一巡目では1962年から1986年までが「陽の時代」とされ、1987年から「陰の時代」に移行した。60年安保闘争、池田内閣の「所得倍増計画」提示からバブルのピークころまでが「陽の時代」に該当する。
 「陰の時代」は2011年まで続き、2012年から「陽の時代」に移行する。バブルのピークを境に日本は「陰の時代」に移行し、この時代特有の経済低迷が持続している。算命学では「陰の時代」の低迷はなおしばらく続くと捉えているが、長く続いた「陰の時代」はいよいよ最終局面を迎えている。
 60年安保、バブル崩壊などは、「陰の時代」と「陽の時代」の境界線上で生じているが、算命学ではこれを「鬼門通過現象」と捉えている。日本はこれからの3、4年間に試練の時期を経験したうえで、新しい明るい時代に移行する可能性を秘めているということになる。

 年末から年初にかけて、内外市場で株価が急落した。NY株価は昨年12月26日終値が13,551ドルだったが、1月8日に12,589ドルまで下落した。962ドル、7.1%の下落を示した。チャート上の節目である昨年11月26日の12,743ドルを下回った。
 チャート上の「三尊天井」が形成されつつあるが、1月9日のザラ場安値は12,501ドルで、昨年8月16日のザラ場安値12,517ドルとほぼ同水準になった。当面、12,500ドルが下値抵抗ラインになる。

 12月27日以降の米国株価は、米国経済の失速とサブプライム関連問題深刻化懸念を背景としている。12月27日に米国証券アナリストが、シティグループ、メリルリンチ、JPモルガンチェースのサブプライム関連追加損失の可能性を示した。
 1月2日にはWTI先物価格が1バレル=100ドルを突破し、ISM製造業景気指数が47.7と景気判断の分岐点になる50を大幅に下回った。さらに、1月4日の昨年12月米国雇用統計で、非農業部門の雇用者増加数が大幅に減少した。12月雇用者は前月比1.8万人増で雇用回復の目安とされる10-15万人増を大幅に下回った。

 こうした事態に対応して、FRBは1月末までの600億ドルの短期資金追加供給方針を発表した。また、バーナンキFRB議長は1月10日にワシントンで講演し、「追加的な金融緩和が必要になるかもしれない。必要に応じて大幅な追加行動をとる用意がある」と発言した。1月30日の次回FOMCで0.5%幅での利下げが決定される観測が強まっている。FRBは昨年9月18日のFOMCでFFレートを5.25%から4.75%へと0.5%引き下げた。10月、12月の利下げ幅は0.25%だった。
 2001年から2003年のFRBによる前回の金利引下げ局面では、13回の利下げのうち当初の5回を含む9回の利下げ幅が0.5%だった。また、3回は定例FOMCでの決定ではない緊急利下げだった。FRBは状況によっては臨時会合で利下げを決定することも考えられる。また、利下げ幅の拡大も考えられる。

 ただ、原油価格の高騰が持続しているため、金融市場のインフレ警戒感が強い。1月8日に公表された昨年12月11日のFOMC議事録によると、12地区連銀のなかの2連銀が利下げに反対した。インフレ懸念が残存するなかでFRBが利下げを実行すると、市場のインフレ懸念が強まり、長期金利上昇やドル下落の反応が生じやすくなる。FRBは困難な政策判断を求められている。
 NYダウは12,500ドルを下回らない水準でもみ合う推移を示しているが、FRBが追加利下げを実行し、米国経済の悪化観測が緩和されるなら、NYダウが12,500ドルから14,000ドルのボックス相場に移行する可能性も生じてくる。今後の景気・インフレ指標、政策対応、為替レート、長期金利動向を注視する必要がある。

 日本の株価も米国株価に連動して下落した。12月26日終値15,653円から1月11日の14,110円へ、1543円、9.8%急落した。1月4日の米国雇用統計で米国経済減速が示唆されて米ドルが下落し、輸出関連企業の株価が下落したことも影響した。米国株安・景気不安、円高、原油価格上昇などの悪材料が重なっている。
 12月27日発表の11月住宅着工戸数は前年同月比で27.0%減少した。建築基準法改正に伴う建築確認の遅れが依然として強く影響している。12月28日発表の11月鉱工業生産指数季節調整値は前月を1.6%ポイント下回った。また、同日発表の11月有効求人倍率は0.99倍と2005年11月以来、2年ぶりに1倍を下回った。

 しかし、日本の上場企業のPERは現在16-17倍の水準にある。利回りに換算すると約6%である。10年国債先物利回りは約1.6%で、株式利回りが10年国債利回りを4.4%上回っている。配当利回りが国債利回りを上回る企業が続出している。日本企業の株価は著しく割安な水準に位置している。
 日本の株式市場は米国株式市場との強い連動関係を有しており、米国株式市場の見極めが重要だが、日本企業の株価が著しく割安な水準にあることへの認識は重要である。
 ただし、日本経済の先行きには明確に黄信号が灯っている。株価下落は消費者や企業経営者の心理を悪化させる。景気悪化を未然に防止するための政策的な配慮が強く求められているが、福田政権はこの点に対する配慮をまったく示していない。日本経済の失速リスクも考慮せざるをえない。

 今週、米国では15日(火)に12月卸売物価指数、12月小売売上高、16日(水)に12月消費者物価指数、12月鉱工業生産指数、および地区連銀経済報告(ベージュブック)、18日(金)に1月ミシガン大消費者信頼感指数が発表される。また、15日(火)にシティグループ、16日(水)にJPモルガン・チェース、17日(木)にメリルリンチの四半期決算が発表され、17日(木)にはバーナンキFRB議長が下院予算委員会で証言する。
 国内では15日(火)に日銀支店長会議が開催され、16日(水)に11月機械受注、18日(金)に12月百貨店売上高が発表される。日本経済の減速観測が強まるかどうか注目される。

 本年は日米の政治状況の変化に関心が注がれる。米国大統領選挙は1月3日のアイオワ州予備選で本格的な幕を開けた。民主党ではオバマ上院議員がアイオワ州で勝利したが1月8日のニューハンプシャー州ではクリントン上院議員が逆転勝利を収めた。民主党の候補者選出はオバマ氏とクリントン氏の一騎打ちの様相を呈している。
 共和党ではアイオワ州ではハッカビー前アーカンソー州知事が、ニューハンプシャー州ではマケイン上院議員が勝利した。全米20州以上で予備選が実施される2月5日のスーパーチューズデーに照準を合わせるジュリアーニ前ニューヨーク市長も有力候補と見なされており、共和党の予備選挙は混戦の様相を示している。

 米国大統領は1989-92年=ブッシュ(父)、93-2000年=クリントン(夫)、01-08年=ブッシュ(子)が務めており、09-12年にクリントン(妻)氏が大統領を務めるとブッシュ家とクリントン家が24年間、大統領を務めることになる。民主党のオバマ氏は有権者に「変化」を訴えて選挙戦を戦っている。
 民主党の主要3候補者のうち、イラク戦争に当初から反対していたのはオバマ氏だけであり、オバマ氏はブッシュ政権の外交政策の変革を強く訴えている。1981年に発足したレーガン政権以来、米国では「市場原理主義」が経済政策の基本に置かれてきた。「市場原理主義」が米国における「格差拡大」の原因になってきたが、中間層の没落が広がるなかで、「市場原理主義」に対する見直しが大統領選挙にどのように影響するのかも注目される。

 2008年、日本の政治状況にどのような変化が生じるのかも注目される。政界再編も大きなテーマである。自民党と民主党は多くの類似点を有しているが、政党間の相違より党内議員間の相違の方が大きいとも言える。自民党、民主党を横断した政界再編の可能性も考えられる。
 高齢化社会の到来を目前に控えて「小さな政府」の実現が政治の重要な課題になる。小泉政権も「小さな政府」を掲げたが、「小さな政府」の内容が問題になる。小泉政権が主張した小さな政府は、弱者を切り捨てる意味での小さな政府だった。「弱者切り捨て」の一方で、「官僚利権を温存」した点に最大の特徴があった。

 小泉政権の「小さな政府」路線に対峙される「小さな政府」路線は、「弱者保護を重視」する一方で「官僚利権を根絶」することを基軸に据えるべきである。同時に外交政策では小泉政権が「対米隷属」を鮮明に示したのに対して、「独立自尊」を明確に掲げるべきである。
 「官僚利権温存」、「弱者切り捨て」、「対米隷属外交」が小泉政権以来の政権が示している政策路線であり、その中心に自民党森派=清和政策研究会が位置している。対峙する路線は「官僚利権根絶」、「弱者保護」、「独立自尊外交」を基軸に据えるべきで、その路線は現在の民主党主要メンバーによって掲げられるべきである。

 官僚利権温存を基軸とする既存の権力構造を根本から変革する最大のチャンスが到来している。民主党はこのチャンスを確実に生かして政権交代を実現しなければならない。
 本年3月に福井俊彦日銀総裁の任期が満了になるが、日本の権力構造の根本変革の端緒を示す意味で、武藤敏郎副総裁の総裁昇格を排除すべきである。(1)日銀総裁には高度に専門的な能力が求められるが、武藤氏はこの条件を満たしていない、(2)財政当局による中央銀行支配を排除しなければならないのは歴史の教訓に基づく、(3)財務省の天下り利権の根絶が行政改革の出発点である、ことを踏まえて民主党は岩田一政現副総裁の総裁昇格案を軸に早期に対案を示すべきである。
  民主党は「官僚利権根絶」、「弱者保護」、「独立自尊外交」を基軸とする総選挙に向けてのマニフェストと総選挙候補者を速やかに確定し、野党共闘を強固にするべきである。2008年に日米の政治潮流が大転換されることが強く望まれる。

2008年1月15日
スリーネーションズリサーチ株式会社
植草一秀

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