コラム

今週の内外政治経済金融情勢の展望

 10月19日、NYダウは前日比366ドルの大幅下落を記録し、9月17日以来、1ヵ月ぶりの安値となる13,522ドルで引けた。10月9日の14,164ドルから642ドル、4.5%下落した。
株価下落の要因としては、

  1. サブプライムローン問題に伴う信用収縮懸念
  2. 原油価格上昇に伴うインフレ懸念
  3. 米国の企業業績および景気の先行きに対する懸念拡大

をあげることができる。

 私はこれまで米国経済がソフトランディングできる可能性が高いとの見通しを記述してきた。その見通しを現状でも維持しているが、10−12月期については、内外の株式市場に対して警戒感を強める必要が高まったと判断する。
 その理由は、

  1. 米国住宅市場調整の米国経済全体への影響が10−12月期に強く表れる可能性が高いこと
  2. 原油価格高騰によってインフレ懸念が残存し、FRBによる金利引下げ政策が制約を受けること
  3. 中国株式市場における株価調整が近い将来に予想されること

である。

 詳しい分析は『金利・為替・株価特報2007年10月22日号=053号』を参照いただきたいが、当面の内外株式市場の調整リスクに対しては警戒が必要である。FRBは米国経済の後退リスクに対して、迅速に行動している。8月17日には公定歩合を0.50%ポイント引下げ、9月18日にはFFレートを0.50%ポイント引き下げた。
 10月16日に公表された9月18日のFOMC議事録によると、いずれの金利引下げも、地区連銀の一部ないし多数は要請しなかったとのことである。利下げはバーナンキFRB議長の強いリーダーシップによって実現したと見られる。
 機先を制する迅速なFRBの政策対応が経済主体の心理悪化を防いでいることが理解できる。ただし、原油価格の高騰が持続すれば、市場のインフレ懸念は残存してしまう。そのなかで利下げを強行すればFRBに対する信認が低下してしまうことも考えられる。当面、FRBは難しい政策対応を迫られる。

 グローバルな視点で経済、金融情勢を観察すると、原油価格高騰と中国、インドなどの新興国の株価急騰が大きなリスクファクターとして浮上していることを指摘できる。原油価格はWTIが10月18日に初めて1バレル=90ドルを突破した。暖房用石油需要が拡大する時期を控えて、米国内の在庫が減少したこと、中東情勢の不安定化、ナイジェリアの政情不安、投機資金のドル資産から原油市場への流入などが、原油価格高騰の要因として指摘されている。
 また、インド株式市場、中国株式市場での最近の株価上昇が急激すぎる状況が強まっている。中国ではインフレ率が大幅に上昇しており、早晩、大幅な金利引上げや人民元引上げが必要になるだろう。中国やインド株式市場の調整が世界市場に伝播することにも警戒が必要になっている。

 日本の株式市場では、新興企業市場の株価もPER水準が20倍を大きく下回った。株価水準から判断して、新興企業市場の株価調整も完了したと考えられる。目先、海外市場での株価変動に連動して日本の株価が大きく下落することが生じれば、再び良好な「押し目買い」の好機が提供されることになると考える。

 今週、米国では24日(水)に9月中古住宅販売、25日(木)に9月耐久財受注、9月新築1戸建て住宅販売が発表され、26日(金)にミシュキンFRB理事の講演が予定されている。国内では26日(金)に9月全国、10月東京の消費者物価指数、9月鉱工業生産指数が発表される。株式市場では、今後本格化する日米有力企業の業績発表に関心が注がれることになる。
 10-12月期は米国経済の減速懸念が強く意識されやすく、グローバルに経済見通しに対する下方圧力が強まることが予想される。日本の株式市場については、「押し目買い」のチャンスを模索する状況が持続すると考える。強い警戒が必要なのは中国を中心とする新興国市場の動向で、そのグローバルな影響について警戒を怠れない。

 国内政局では、政府が国会に提出した給油新法案の審議が一段と不透明になっている。政府は元来、テロ特措法の延長を意図していたが、7月29日の参議院選挙で自民党が大敗し、その後、安倍政権が対応を誤り、福田政権の発足が大幅に遅れたことから、テロ特措法の延長は不可能になった。代案として給油新法案が国会に提出されたが、重大疑惑が相次いで表面化して、法律成立が困難視されている。
 重大疑惑は、

  1. 燃料流用疑惑
  2. 情報隠ぺい、改ざん疑惑
  3. 防衛省幹部の法令違反疑惑

である。福田政権は早期の衆議院解散を回避するために、給油法案の成立を断念する可能性が高い。

 自民党は政治資金規正法改正に際して、1円以上の領収書公開に消極的なスタンスを示している。政府系金融機関の人事においては、財務省からの天下りをほぼ全面的に温存した。マスメディアは、福田政権の守旧的行動を糾弾すべきであるが、まったくその気配を示していない。
 背後には、日本における政権交代を絶対に阻止しようとの米国の意向が見え隠れしている。「日本国民の日本国民による日本国民のための政府」を樹立するには、政権交代を実現するしか道は残されていない。真実を見極めようとする国民は、真実を隠蔽し、米国の傀儡政権を徹底して擁護するマスメディアの情報操作を正確に見抜き、次期総選挙での政権交代を何としても実現させる方向で尽力しなければならない。日本政治は刻々と決戦の瞬間に近づいている。

2007年10月24日
植草一秀

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