コラム

今週の内外経済金融情勢の展望

 内外株式市場はもみ合いながらも堅調な推移を示している。NYダウは6月初旬以降、13,200ドルから13,700ドルの間でもみ合っているが、引き続き史上最高値圏内での株価推移である。日経平均株価は6月21日に18,240円を記録して、バブル崩壊後の最高値を更新し、2000年5月以来、7年2ヶ月ぶりの水準に上昇した。7月9日には18,261円と高値を更新した。
 筆者は本コラムで、米国経済のソフトランディング、日本経済の回復持続と株価上昇を予測してきたが、これまでの市場推移は予測に近いものである。ただし、7月から8月にかけて、日米市場ともに小幅の調整を演じるリスクが存在しているように思われる。詳細を『金利・為替・株価特報 2007年7月6日号』に記述したので、ぜひ参照していただきたい。

 7月2日に発表された日銀短観2007年6月調査は、日本経済の失速懸念をとりあえず払拭するものになった。この詳細も『特報』を参照いただきたいが、日本経済の改善傾向は現状では維持されている。7月9日に発表された日本の5月機械受注統計では、設備投資の先行指標である船舶・電力を除いた民需の受注額(季節調整値)が前月比5.9%増加の1兆0717億円となり、2ヶ月連続で増加した。民間調査機関の事前予測は前月比2.3%増加で発表数値はこれを上回った。また機械受注総額は前月比5.8%増の2兆7893億円と、過去最高を更新し、内閣府は機械受注の基調判断をこれまでの「足元弱含み」から「一進一退で推移」に上方修正した。基調判断の上方修正は2006年6月以来11ヶ月ぶりで「一進一退で推移」との判断は2月以来となる。
 設備投資の基調が依然として強い。景気回復が持続し、株価上昇が持続し、個人消費の基調が強くなるなら、日本経済の回復基調は持続性を強めることになる。景気回復持続、株価上昇持続の条件がどこにあるのかを考えなければならない。

 今後の金融市場動向を考察する際に、依然としてキーファクターになると考えられるのが米国市場である。米国経済の基調、インフレ懸念、原油価格、FRBの金融政策、長期金利動向が鍵を握る。
日本でも長期金利動向に注意が必要である。日銀の金融政策をどのように読むか。長期金利動向を含めて株価の変動を洞察しなければならない。

 短期の変動と中期の変動とを分けて考察する必要がある。7、8月にかけての市場の動揺を十分警戒しなければならない。今週、国内では9日(月)に5月機械受注統計が発表された。内容は上述のとおりである。11日(水)には日銀の金融政策決定会合が開催される。利上げは予測されないが、8月利上げの可能性は50%以上の確率で存在している。福井総裁の発言に関心が寄せられる。米国では12日(木)に5月貿易収支、13日(金)に6月小売売上、7月ミシガン大消費者信頼感指数が発表される。
FRB関係者の発言機会としては、10日(火)にバーナンキ米FRB議長が全米経済研究所(NBER)主催の会合で「インフレ」ついて講演、12日(木)にイエレン・サンフランシスコ連銀総裁の講演が予定されている。10日(火)のバーナンキ議長発言には十分な注意が必要である。とりわけ、原油価格とインフレ懸念、金融政策と米国経済についてどのようなコメントを発するかが注視される。

 参議院選挙が7月12日に公示される。投票日は7月29日である。参議院での過半数獲得に必要な議席数は与党64議席、野党59議席である。与党の公明党が前回同数の13議席を獲得する場合、自民党は51議席以上を獲得しなければならない。自民党が比例区で前回同数の15議席、18の複数定員選挙区で18議席獲得すると仮定すると、29ある1人区で18議席以上を獲得しなければならないことになる。
 安倍首相は自民党内の慎重論を押し切り、通常国会の会期を延長して参議院選挙に臨んだ。選挙結果に対する安倍首相の責任は極めて重くなった。年金記録不祥事、松岡前農水相の政治資金疑惑、久間前防衛相の米国原爆投下容認発言、赤城農水相の政治資金疑惑などの諸問題に対する安倍首相の対応に対して国民が審判を下す選挙と位置づけられる。

 年金問題で安倍首相は「社会保険庁と労働組合が悪い」との発言を繰り返している。巨大な不祥事を起こした会社の社長が記者会見で、「担当の事業本部とその部門の労働組合に責任があり、その部門を機構改革する対策を進めているので、私は悪くない」と発言しているように映る。
 安倍首相は久間防衛相を一貫して擁護し、久間氏は辞任の記者会見で「参議院選挙に影響するから辞任する、与党に迷惑をかけるから辞任する」と述べた。国民に対して申し訳ないから辞任するとは述べなかった。サンデープロジェクトで田原総一郎氏は久間発言を徹底擁護する発言を繰り返したが、テレビ・メディアの偏向ぶりには目を覆いたくなる状況が広がっている。
 メディアが相変わらず偏向し続けるなかで、有権者が的確な投票行動を示せるのか注目される。民主党の小沢一郎代表は、与党を過半数割れに追い込めなければ、政治生命を終えると明言した。安倍首相は責任問題の明確化から逃避している。赤城農水相および関係者は事務所費問題について、有権者が納得できる説明をしていないが、安倍首相は赤城農水相を擁護し続けている。
  自民党獲得議席が47議席以下に留まる場合、安倍首相の進退問題が浮上することになると思われる。日本の政治状況の大転換は日本および日本経済にとっての好材料である。仮に政治状況が大転換する場合、金融市場は短期的にはともかく、中期的には変化を好材料と捉えることになると考える。

2007年7月9日
スリーネーションズリサーチ株式会社
植草 一秀

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