コラム

日銀短観(10月2日)と今後の金融市場の展望

10月2日、日銀短観2006年9月調査結果が発表された。
大企業製造業の業況判断DIは6月調査の+21から+24へ3ポイント上昇、大企業非製造業の業況判断DIは6月調査と同水準の+20となった。
日本企業の業況が比較的良好に推移していることが確認された。

しかし、先行きについては必ずしも楽観が許されない。本年12月の先行き見通しについては、非製造業が+21へ1ポイントの改善を見込んでいるものの、製造業では+21へと3ポイントの悪化を見込んでいる。

日経平均株価は16000円台を回復し比較的堅調な推移を示している。世界の株式市場は米国市場との連動性を示しており、米国株価が史上最高値に迫っており、連動して主要国株式市場も堅調な動向を示している。

今後の日本の株式市場動向については、@米国株式市場・経済の推移、A安倍政権移行後の日本の経済政策運営の二点が鍵を握ってくることになると考えられるが、前回コラムにも執筆したように、安倍政権下での財政政策運営が現状のまま「超緊縮スタンス」を維持したものになる場合、株価の下落トレンドへの転換、日本経済の調整局面への移行の可能性を考慮せざるを得なくなる。

筆者がこれまで『金利・為替・株価レポート』で記述してきたように、米国経済は、原油価格が1バレル=60ドル方向に反落したことを受けてソフト・ランディングの可能性を強めつつあるように思われる。この変化を受けてNYダウが2000年1月14日の11722ドルを更新する可能性は依然として高いと考える。
住宅投資の減少、連動する個人消費の伸び率低下がリスクであるが、米国経済のリセッション入りの可能性は現状では高くはない。

米国経済が堅調でNYダウが堅調に推移している間は問題は顕在化しないと考えられ、当面のリスクは限定的と思われる。しかし、米国経済の減速感が強まり、NYダウが反落することになれば十分な警戒が必要になる。

今後の注意点として特筆すべきはA安倍政権下での財政政策運営である。一般会計の歳出規模と税収の差額を財政赤字と定義して、その前年差を計算してみると、2006年度は財政赤字が前年度に比べて7.5兆円程度減少する見込みとなっている。
財政赤字の減少はマクロの日本経済に対する下方圧力を意味する。97年度に橋本政権が超緊縮財政を実行して日本経済は撃墜された。2000年度、2001年度に森政権、小泉政権が超緊縮財政を実行して二度目の日本経済撃墜をもたらした。
2006年度の緊縮の程度は過去最大であった2001年度当初予算を上回っており、日本経済の後退局面入りの引き金を引いてしまうリスクをはらんでいる。

安倍政権は今後の財政運営について「成長と歳出削減による財政赤字削減」を掲げているが、現状の歳出削減路線は成長率を大幅に引き下げてしまう可能性を内包しており、基本的な論理矛盾をはらんでいる。

極端な歳出削減を緩和して政策スタンスを中立の方向に修正することが成長持続には不可欠であると考える。安倍政権発足後の首相、財務相、経済相の発言からは上述の現状認識が保持されていないことが伺われる。一般歳出の削減の可能性さえ感じられ、非常に強い懸念を感じる。

2006年度補正予算、2007年度当初予算編成を通じて、財政政策運営の軌道修正が強く求められるがそのような方向での軌道修正が実行されない場合には、10月下旬以降の日本の株価下落、2007年の日本経済調整の可能性を現実の問題として考察することが求められることも考えられる。

2006年10月4日
スリーネーションズリサーチ株式会社
植草 一秀

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