コラム

来週の金融市場の展望(2006年4月21日)

 日本の株価は筆者がこれまで予想してきた通りの推移を示している。1月中旬から3月中旬にかけて、株価は調整局面を迎えた。急ピッチな株価上昇に対する調整が求められていたタイミングに、ライブドアショックが発生した。1月はライブドアに対する強制捜査そのものが株価下落要因になったが、2月中旬にはライブドアの上場廃止観測が広がり、株価再下落の要因になった。
  2月末には株価が持ち直したが、3月にはいってから、日本銀行による量的金融緩和政策の解除観測が広がり、株価は三たび下落したのである。こうした調整を経て3月中旬より株価は反発し、3月29日に2月6日終値16,747円の高値を上回り、調整完了がチャートのうえで確認された。

 日経平均株価は4月7日に17,563円に上昇した。今後の方向を考えるうえで重要な三つの要素は、(1)米国金融引締め政策の着地点、(2)原油市況、(3)日本の景況とゼロ金利解除、である。
  今週はこの問題を考えるうえで、非常に重要な二つの事実が観測された。ひとつは米国のFOMCで多くの委員が一連の利上げ政策の終了が近い可能性が高いと考えていることが明らかにされたことだ。もうひとつの事象は原油価格が再騰貴し、市場最高値を更新したことである。

 4月18日にFRB(米国連邦準備制度理事会)は3月27−28日のFOMC(連公開市場委員会)の議事録を公表した。議事録によると、当局者は潜在的インフレリスクについて依然として警戒しているものの、利上げがほぼ終了したと判断していることが明らかになった。3月28日にFRBが2004年6月以来15回連続となるFFレートの引上げを決定した際、市場はFRBから発表されるコメントに注目した。
  市場は一連の金利引上げ政策が終了に近付いていることを示唆する表現が示される可能性を探ったが、現実には利上げ終了を示唆する表現は盛り込まれなかった。インフレ懸念を警戒し、必要に応じて一段の金融引締めが必要になる可能性が指摘されただけであった。

 ところが実際には、3月28−29日のFOMCで大半のメンバーが引締めプロセスの終了が近い可能性が高いと考えていたことが判明した。このことからバーナンキFRB新議長の慎重な行動様式が読み取れる。3月28日にこの内容をコメントの内容に盛り込んでいたなら、市場は激しい反応を示しただろう。株価上昇に勢いがつけば、景気にも上方圧力が生じてインフレ圧力が強まってしまうことも考えうる。利上げ終了示唆が一転して利上げ継続に転換してしまう可能性も否定できない。

 市場心理が過度の楽観論に傾かないように配慮したことが推察される。また、中央銀行総裁の行動様式としては、インフレにしっかり対抗する姿勢、インフレファイターとしてのスタンスをしっかりと市場に印象付けることが市場からの信認確保のためには得策との判断も働いていると考えられる。
  FOMC議事録が公表されて米国株価は大幅上昇を示した。4月18日、NYダウは前日比195ドル、1.8%の上昇を記録した。筆者はかねてより、米国では一連の利上げ終結観測の広がりとともに、2006年年央にも史上最高値を更新するとの予測を示してきた。この状況がかなり近付いてきた。

 先行き見通しは明るくなっている。しかし、第二の要因を考慮するならば手放しの楽観は許されない。原油価格が史上最高値を更新していることだ。原油価格の指標となっているWTI先物相場は、4月18、19日に史上最高値を更新した。WTI価格は昨年8月末に1バレル=70ドルを突破して史上最高値を更新した。その後反落し、一時は1バレル=50ドル台にまで下落した。ところが3月頃から再上昇を示し、ついに4月下旬に高値を更新した。
  FOMCでの利上げ終結観測と原油価格史上最高値更新の時間的関係を注視する必要がある。利上げ終了観測が示されたのは3月末である。原油価格が高値を更新したのは3週間後である。3月末のFOMCで利上げ終結が近いことが共通認識とされたことは十分に理解できるが、同時に「潜在的なインフレリスク」については改めて確認もされてきた。必要に応じて一段の金融引締めが必要になることも確認されている。
  その後に原油価格が史上最高値を更新した。4月下旬をピークに原油価格が反落するなら、利上げ終結観測は一段と強まり、米国株価は史上最高値更新に向かう可能性が高い。しかし、原油価格の一段の上昇が生じる場合には、利上げ終結観測は再び大幅に後退し、株価は反落してしまうと考えられる。

 現時点での原油価格上昇が消費者物価統計で確認されるのは6月中旬である。昨年8月の原油価格上昇が物価統計に表れ、インフレ警戒感が広がったのも10月であった。10月に株価は調整を演じている。
  今後の原油価格動向が最大の鍵を握るわけだが、原油価格が強含みで推移する場合には、米国の利上げ終結観測がいったん後退する可能性があり、この点への注意が肝要である。
  21日(金)にワシントンでG7が開催される。米国では26日(水)に3月耐久財受注、3月新築住宅販売が発表される。また米国地区連銀経済報告(ベージュブック)も発表される。28日(金)には本年1-3月期のGDP速報が発表される。高めの経済成長率が発表される可能性が高く、利上げ終結観測が後退する可能性もあるので要注意である。

日本では、28日(金)に重要事項が重なる。3月全国消費者物価、鉱工業生産指数、失業率などが発表される。また、日銀は「展望レポート」を発表し、福井日銀総裁が記者会見を行なう。ゼロ金利解除の時期を探る重要な事項である。
  ゴールデンウィーク直前にこうしたイベントが重なるために、週末にかけてポジションを軽くするための売りが出やすくなると考えられる。株価の小幅調整に注意が必要である。

2006年4月21日
植草 一秀

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