コラム

今週の金融市場の展望(2006年4月4日)

桜が満開となり春爛漫のこの季節に、日本経済にも久方ぶりに明るさが広がり始めている。米国では金利引上げ観測が残存し、先行き不透明感があるが、バーナンキFRB新議長の手綱さばきもまずは堅実であることが明らかになっており、NY市場も史上最高値更新に向けて変化してゆく公算が高い。

2005年度末から2006年度初にかけて重要な変化が立て続けに生じた。前回掲載の本コラムに記述したことがそのまま現実化している。第一は民主党の執行部総退陣である。メール問題に決着をつけ、民主党の新体制が構築される。「災い転じて福となす」ことが大切である。第二は日本の株式市場が筆者の見通しどおりに昨年5月以来の「株価上昇第三波動」に移行したことである。第三はバーナンキFRB新議長の下での第一回目のFOMCで、2004年6月以来15回目になる利上げが実施されたことである。筆者は昨年10月にバーナンキ氏がFRB議長に指名された時点から、今回の利上げを予想してきた。

4月3日に日銀短観が発表された。大企業製造業の業況判断は事前の市場観測では小幅改善が見込まれていたが、筆者は3月27日付の本欄で、日銀短観で業況判断が小幅悪化する可能性があることを指摘した。実際に大企業製造業の業況判断DIは小幅悪化した。日本経済は緩やかな改善傾向のなかでの小休止の局面に差しかかっているが、先行きの見通しは決して暗くはない。緩やかな経済状況の改善が持続する可能性が高い。

リスクは原油市況である。ネオコンの世界戦略をバックボーンとするブッシュ政権は、対外的に米国の価値観、流儀を一方的に他国に強制する強圧外交を展開している。イスラム社会の反米感情は強まっており、テロ活動とイスラム陣営に対する米国の軍事侵攻が悪循環を形成している。イラク、イラン、パレスチナを中心に国際政治情勢は緊張状態から解放されずにいる。国際政治情勢の緊迫化が原油価格上昇の大きな背景である。
また、中国経済の急激な拡大は世界のエネルギー需給を大きく変化させ始めている。中長期的な資源不足が明白になり始めている。原油価格上昇の背景にはこうした中長期的な需給バランスの変化が横たわっている。
原油市況に大きな変動が生じることが、当面の最大のリスクである。原油価格急騰が生じる場合、世界的に株式市場は強い下方圧力を受ける。世界の金利水準は上昇する。為替レートは一概に判定できないが、資源を持たない日本の実情を踏まえれば、円は下落しやすいだろう。

民主党の新執行部選出、日本の株式市場の上昇第三波動への移行、日本経済の若干の足踏み、米国金融政策の今後については、『金利・為替・株価特報』2006年4月3日号に詳しく記述しているので、是非この機会にご購読を検討していただきたい。株式市場は株価上昇の第三波動に移行した。当面期待できる株価上昇の残存部分が限られてきているので、迅速な行動が必要である。

米国では、次回FOMCでFFレートの16回目の引上げが実施される可能性が高い。FFレートはついに5.0%に達する。米国10年国債利回りは、現在4.8%の水準にあるが、5.0%水準に上昇する可能性が高い。原油価格の急騰がなければ、5月の利上げが今般の利上げ局面での分水嶺になる可能性が高いのではないかと考えられる。

日銀短観では大企業製造業の業況判断DIが小幅悪化した。しかし、3月27日付本欄でも指摘したように、先行きに関して過度の悲観的観測を持つ必要は高くない。日本経済の緩やかな改善は持続する可能性が高い。
日銀短観を細かく分析することにより、業績が上方修正されつつある業種と業績が下方修正される業種とを見定めることができる。株式投資に極めて有効な分析である。日本の株価は依然として「割安修正」の局面にある。「割高」な株式を買い上がってゆくのではなく、「割安」な株式を買い進めてゆくのであるから、経済改善が続いている間は株価下落リスクは限定的である。

今週、国内では6日(木)に2月景気動向指数が発表される。2月は生産指数、出荷指数、電力使用量、小売業商業販売額などが3ヵ月前比で減少したために、景気動向指数は7ヵ月ぶりに50%を下回るものと見られる。3月日銀短観に引き続き景気改善一服感が改めて確認されることになる。だが、4−6月見通しは堅調であり、先行き悲観論が台頭することはないと考えられる。

米国では、3日(月)に3月ISM製造業景気指数が発表された。事前の市場予想は57.9だったが、実際は55.2にとどまった。2月の56.7から低下した。3日のNY市場ではNYダウが100ドルを超す上昇を示していたが、ISM指数が発表され、引けにかけて急速に値を消した。今週の最大の注目指標は7日の3月雇用統計である。非農業部門の雇用者増加数は19万人が予想されている。景気が強いとの印象が生じれば、利上げ長期化観測が広がり株価下落要因になるだろう。逆に弱すぎる統計も景気失速懸念を招く。ほどほどに弱い数値を市場は好感する傾向を強めている。

FRB関係者の発言としては、4日(火)にモスコウ・シカゴ連銀総裁講演、ラッカー・リッチモンド連銀総裁講演、ホーニグ・カンザスシティー連銀総裁講演、5日(水)にガイトナー・ニューヨーク連銀総裁講演、ホーニグ・カンザスシティー連銀総裁講演、フィッシャー・シカゴ連銀総裁講演、6日(木)にグロスナーFRB理事講演が予定されている。

日本では株価の上昇傾向が暫く継続するものと考えられる。米国では、景気動向、インフレ動向、原油市況をにらみながら、株価は11,000ドル台でもみ合いを継続するものと考えられる。利上げ終結観測の広がりとともに株価は上離れる可能性が高い。

為替市場では、当面は内外実質短期金利差からドルが堅調に推移すると考えられるが、年央以降、米国の利上げが終結し、日本の利上げが視界に入ることを受けて、ドルは下落しやすくなると考えられる。

メール問題の取り扱いにより、民主党前原執行部は総退陣した。「災い転じて福となす」ためには、民主党がこの機会に最強の体制を構築しなければならない。民主党幹部が私益ではなく公益を優先して意思決定できるかが最大の注目点である。自民党は民主党が小沢氏中心の強固な体制を構築することをなんとしても阻止しようとあらゆる手段を用いてくると見られる。

民主党が最強の体制を構築することがこの国の近未来のために不可欠である。政治に新風を吹き込む民主党の体制刷新が待望される。

2006年4月4日
植草 一秀

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