コラム

今来週の金融市場の展望(2006年2月13日)

 2月13日(月)の日経平均株価終値は、前日比380円下落の15,877円となり、1月26以来、約半月ぶりに16,000円を下回った。株式市場では気迷い気分が強まっている。15,000円から16,500円のレンジでのもみ合いが暫く続く可能性が高まってきた。

 筆者は昨年8月8日以降の株価上昇波動は継続すると判断しているが、上昇波動のなかでの小幅調整局面がやや長期化する可能性が生じているように思われる。筆者は、今回の株価上昇の初期から、今回の株価上昇局面が1995年から96年にかけての株価上昇に類似したものになるのではないかとの見通しを述べてきたが、1995年から96年にかけての株価上昇局面でも、ある程度の期間と幅のある調整を経験している。
 1995年から96年の株価上昇局面は95年7月3日の14,485円から96年6月26日の22,666円までの上昇である。期間は約1年、上昇幅は8181円だった。この1年間の上昇は三つの波動によって達成された。三段階での上昇の途上に二度の調整局面を経過している。
 1度目の調整は95年9月14日の18,758円から10月27日の17,337円までの調整だった。株価下落の期間は約1ヵ月半、下落幅は1421円だった。2度目の調整は96年2月8日の21,118円から3月13日の19,734円までの調整だった。株価下落の期間は1ヵ月強、下落幅は1384円だった。

 つまり、株価本格上昇局面でも株価が一本調子で上昇し続けたわけではない。95年から96年の例で言えば、1ヵ月から1ヵ月半、値幅にして1400円程度の調整を間に二度はさんで1年で8000円の上昇を達成しているのである。2月3日付本欄でも記述したが、今回上昇局面でも昨年10月に期間20日間、値幅632円の調整局面を経過しており、1月13日以降二度目の調整局面を迎えていると考えられる。

 1月13日に日経平均株価が16,454円をつけたのち、1月18日に15,341円を記録した。その後1月27日に16,460円を回復して1月13日の終値を突破した。2月6日には16,747円の高値を記録したのちの再調整となっている。2月13日終値では15,877円を記録した。
 ライブドア・ショックを契機にした株価調整局面が早期に完了したかの印象が持たれたが、ここにきて調整がやや長期化する可能性が生じてきた。15,000円台前半への調整の可能性が残されており、調整期間も長ければ3月中頃まで長引く可能性も生じている。

 株価調整の背景は次の三つである。第一はライブドア・ショックの後遺症である。2月13日の株価下落の最大の要因はライブドア問題の新たな進展にあったと考えられる。堀江貴文ライブドア社長ら4名が証券取引法違反容疑で起訴された。また、証券取引等監視委員会はライブドアを同法違反容疑で刑事告発した。東京証券取引所はこうした決定を受けてライブドアの上場廃止の方針を固めた模様である。
 ライブドア・ショックの第二波が市場を襲ったのである。こうした一連の措置おおび見通しを受けて、ライブドアの株価は2月13日、前日比30円安(ストップ安)の61円で3000万株の売りを残したまま引けた。ライブドア・ショックの広がりは大きく、今後についてもまだ楽観は許されない。

 第二の背景は、日本の金融政策変更に対する恐怖感が市場に蔓延し始めたことである。日本銀行の量的金融緩和政策解除、ゼロ金利政策解除は日本経済の健全化過程で越えてゆかなければならないハードルである。適切な手順を踏んで時期を誤らずに対応すれば大きな問題を引き起こす性質のものではない。
事態が混乱し始めているのは、政府や自民党の一部の人々が外野席から金融政策に対してスタンドプレーを展開しているからである。この問題については、『金利・為替・株価特報』2006年2月16日号に詳論する予定であるのでぜひ参照されたい。竹中総務相、中川自民党政調会長らの場外での発言が市場に無用な混乱を与え始めている。

 第三の背景は、原油価格が昨年8−9月の高値に接近するなかで、米国の金融引締め政策長期化の見通しが浮上してきたことだ。筆者は2006年3月28日のFOMCでの金利引上げ実施の可能性を早い段階から指摘してきたが、金融市場では、昨年11月頃から金利引上げ終結観測が何度か浮上し、本年1月6日にはNYダウが一時的に11,000ドル台を回復した。
 ところが、その後、金利引上げ継続観測が強まり、株価は小幅調整に転じた。現状では3月28日のFOMCでの利上げ実施が市場の多数派の見解になったが、さらに、5月10日のFOMCでも利上げが実施されるとの見方も強まりつつある。

 これらの三つの要因により、日本の株価は調整局面を迎えている。いずれの問題も問題が解決されるのに時間を要すると見られる。したがって、この調整局面がやや長期化する可能性が強まり始めているのだ。
 だが、基本シナリオを変更する必要性は高くないと考える。日本経済の改善は継続している。今週17日(金)に発表される2005年10−12月期GDP第1次速報も、年率5%程度の実質成長が見込まれており、日本経済のファンダメンタルズは基本的に良好である。

 原油価格動向、米国の住宅投資減速の程度などを注意深く観察してゆく必要があるが、米国が金利引上げ政策を維持することにより、「インフレなき成長持続」のソフトランディングを達成してゆく可能性は依然として高い。2月、3月の調整を経過して内外市場の不安心理が徐々に後退してゆく展開が予想される。

 今週の日程としては、国内では16日(木)の2月ロイター短観、17日(金)の10−12月期GDP1次速報が注目される。また、西村日銀審議委員が16日(木)に、岩田日銀副総裁が17日(金)に会見、講演を行なう予定である。福井日銀総裁が量的緩和解除に積極的な見解を示しているなかでどのような発言を示すか注目される。両氏は財務省との関係が強いと考えられ、量的緩和政策の早期解除に慎重な姿勢を示す可能性がある。

 米国では、14日(火)に1月小売売上高、15日(水)に1月鉱工業生産、16日(木)に1月住宅着工件数、17日(金)に1月卸売物価指数が発表される。また、ピアナルト・クリーブランド連銀総裁が13日(月)、ラッカー・リッチモンド連銀総裁が14日(火)に講演する予定である。市場の最大の注目材料は15日(水)、16日(木)に予定されているバーナンキFRB新議長の議会証言である。
 インフレに厳しく対応してゆく方針が示されると考えられる。先週10日(金)発表の2005年米国貿易収支は7000億ドルを突破して、予想通りドル下落要因となった。ドルは金利に支えられるが、貿易赤字・財政赤字の双子の赤字要因で上値を抑えられる。この状況の継続が予想される。

2006年2月13日
植草 一秀

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