コラム

今週の金融市場展望(2006年1月10日)

 新年明けましておめでとうございます。皆様おそろいでお健やかに佳き新春をお迎えのこととお慶び申し上げます。旧年中は格別のご厚情を賜りまして心よりお礼申し上げます。なにとぞ本年も変わらぬご厚誼を賜りますよう謹んでお願い申し上げます。新春の1月12日に『ウエクサレポート』(市井文学株式会社)が刊行されます。是非ご購読賜りますようお願い申し上げます。

 2006年の干支は「丙戌(ひのえいぬ=へいかのいぬ)」である。詳しくは『金利・為替・株価特報』2006年1月1日号を参照いただきたいが、算命学(参考=算命学総本校高尾学館)が説くところでは、「動乱期」=「乱世」の最終年のなかでたった1年ほっとする年ということになる。
  「丙」は陰陽五行では「火性の陽」をあらわし「太陽」にたとえられる。(1)明るい、(2)公平、(3)明らか、などの意味があり、いままで隠されていたものが明るみに出るとの意味合いもあるとのこと。「戌」は文字の上から「収穫」の意味がある。収穫すべきを収穫し、冬に備えることが肝要との暗示もある。

 2006年は株価上昇、景気浮上で明るさが広がることが予想されるが、そのまま順調な軌道に乗ってゆけるのかどうか、手放しの楽観は許されない。筆者は日経平均株価が2006年なかごろに19,000円から20,000円の高値を記録するとの見通しを昨年8月下旬より提示しているが、順調な株価上昇の実りをどのように活かすのかが重要と思われる。

 国内経済を概観するとき、(1)株価上昇、(2)個人消費拡大、(3)金融政策転換、がキーファクターになると考えられる。株価上昇の理由はこれまで再三にわたり述べてきているように、日本の株価水準が理論的な妥当水準と比較して、大幅に割安な水準に置かれていたことである。昨年8月8日の郵政民営化法案否決を「きっかけ」にして、「割安な」株価が理論的に「妥当な」株価へと水準修正を始動したのである。多くの専門家と称する人々が「株価上昇が停止する」と予測するなかで、日本の株価は短期急上昇を遂げている。

 小泉改革に対する期待との論評も間違いである。小泉政権は2001年の政権発足以来、間違った経済政策を強行に実施して、日本経済を奈落の底に誘導していった。2003年に「退出すべきは退出」の基本方針を全面撤回し、「退出しそうな銀行を税金で救済」し、金融恐慌の惨事を辛うじて回避したのである。筆者のこの主張と同様の主張を、作家の高杉良氏が「月刊現代2006年2月号」(講談社)に「小泉・竹中『亡国コンビ』への退場勧告」と題する論文として発表しているので、ぜひご一読されたい。
  2001年5月7日に小泉首相が所信表明演説を行なって以来、株価は下落の一途をたどった。スタート地点の株価に回帰したのは2005年11月18日である。4年半の時間が空費され、多くの国民が被害を蒙った。年間3万人の自殺、年間20万件の自己破産の多くは、小泉政権の経済政策の失敗によって発生したと言って間違いはない。
 
  2006年は株価上昇が景気回復の鍵を握る。企業の設備投資は企業収益の好調さを背景に非常に活発である。2006年の特徴はこれまで製造業に著しく偏っていた企業の設備投資が非製造業にまで広がりを見せ始めたことである。
  景気拡大の強さを左右する最重要のファクターは個人消費である。大手百貨店の初売りは記録的な好調さを示した。株価上昇−個人消費拡大の連鎖が持続するのかどうか。2006年の日本経済の基調を判断する上で、もっとも重要なポイントとなる。

 2006年の最大のリスクファクターは金融政策と金利動向である。政府は量的金融緩和政策を持続させようと、日銀の政策決定に対してあからさまな圧力をかけ始めている。金川千尋信越化学工業社長が日経新聞紙上で述べているように、政府の日銀に対する介入は百害あって一利なしである。政府が日銀に圧力をかけるのでなく、日銀が適切な政策運営を実行できるための「構造」をどのように確立してゆくのかが重要なのである。

 この点で最も重要なのは、日本銀行の政策委員会の構成メンバーをどのように選出するかである。日本銀行の政策決定は総裁1名、副総裁2名、審議委員6名の合計9名のメンバーによる多数決に委ねられている。政府の意向に従うメンバーが5名以上そろえば、政府は日銀を実質的に支配できる。とりわけ重要な意味を持つのが日銀総裁人事である。政府、財務省は次期日銀総裁に武藤現副総裁を擁立しようとしている。日銀が政府、財政当局の支配下に置かれることのリスクは、日本やドイツの歴史が証明している。
  近視眼的な発想、財務省による日銀支配の謀略を確実に排除してゆかなければならない。福井日銀総裁は通貨の番人である日本銀行の最高責任者として、毅然とした対応を示す必要がある。

 今週の注目点は、為替市場、米国株式市場、日本株式市場である。1月6日に発表された12月米国雇用統計では非農業部門の雇用者が10.8万人増加した。事前予想の20万人を大幅に下回った。この結果、FRBによる金利引上げ政策の終了が一段と近付いたとの見方が広がり、NY株価が上昇する一方、ドルが下落した。
  今週は、11日(水)にガイトナー・NY連銀総裁の講演、12日(木)に11月米国貿易収支、12月米国財政収支、13日(金)に12月米国卸売物価指数、12月米国小売売上高、フィッシャー・ダラス連銀総裁の講演が予定されている。市場では、早期の金利引上げ終結期待が広がっているが、まだまだ、何度かの揺り戻しが生じるものと考えられる。統計数値を吟味しなければならない。

 日本では、11日(水)に11月景気動向指数が発表される。13日(金)には11月機械受注が発表される。景気動向指数は4ヵ月連続で一致指数が50%を超す見通しである。景気回復持続観測が補強されることになる。また、11月機械受注は船舶・電力を除く民需ベースで前月比5.5%の増加が見込まれている。プラスとなれば2ヶ月連続の増加となる。日本については、設備投資主導での景気改善持続が確認される公算が高い。
 
  日本の株式市場は、これまでの急ピッチな上昇に対する警戒感が広がり始めている。8月8日以降の株価急上昇は10月4日まで続いた。10月21日からの株価上昇は2006年年初まで持続した。日経平均株価で3000円強上昇して半月ほどの調整を演じ、次の上昇波動に移行する変動が示されてきた。16,000円台なかばまで上昇しただけに、小幅調整が生じてもおかしくはないタイミングである。
  節分天井というが、節分底といったこともあるかも知れない。もうひとつ重要な点は、株式市場のリード役に微妙な変化の兆しが見え始めていることである。詳しくは『金利・為替・株価特報』を参照いただきたいが、2006年前半、株式市場は非常に重要な局面転換を示す可能性がある。ドルは米国金融政策動向を睨み、変動しやすい状況になっているが、日米の実質短期金利差は1.5%水準に拡大しており、トレンド転換とみなすことに対しては慎重さが求められる。
  半年をにらんだ中期の見通しと、目先の市場のリズムとを両にらみで対応してゆく必要がある。

2006年1月10日
植草 一秀

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