コラム

今週の金融市場展望(2005年12月5日)

 日経平均株価の上昇が続いている。このような急激な株価上昇予測はあまり存在しなかったが、筆者は『金利・為替・株価特報2005年8月16日号Vol.019』で株価急上昇の可能性を指摘した。本コラム『今週の金融市場の展望(2005年8月29日)』で、衆議院解散をきっかけとしての株価の上方への水準修正が始動しているとの判断を示した。
  筆者は2006年央に向けての株価本格上昇を予測してきている。日経平均株価で19,000円までの上昇が予想される。株価上昇の理由は日本の株価が理論値と比較して大幅に下方に位置してきたことである。「逆バブル」が解消されつつあると判断している。こうした見解は市場に存在しない。筆者独自の分析であるが、これまでの市場変動は筆者の見解が正しいことを立証しているように見える。

 『金利・為替・株価特報2005年12月1日号Vol.26』のタイトルは『株式市場本格相場の読み方と投資手法』である。本ホームページ上の『会員制レポート』欄に『金利・為替・株価特報』に掲載してきたすべての参考銘柄の株価推移一覧表を掲載した。『2005年11月1日号Vol.24』までに掲載した参考銘柄全36銘柄のなかで、2倍の上昇を示した銘柄が3銘柄、30%以上の上昇を示した銘柄が19銘柄(3銘柄を含む)の実績となっている。値下がりした銘柄は2銘柄である。値下がりをした2銘柄を除く34銘柄の株価上昇率の平均値は38.9%となっている。
  計算方法は掲載後の7営業日中の安値からその後の高値までの上昇率であるから、実際にこの数値そのままの成果を得ることは困難だが、紹介した参考銘柄のパフォーマンスは著しく高い。今後も優良な参考銘柄の提示に努めてまいりたい。12月中に新規に購読を申し込まれた会員には、12月1日号、12月16日号を無料で提供することにしているので、是非この機会のご購読お申し込みをお願い申し上げます。

 今週の金融市場動向であるが、国内では7−9月期法人企業統計(5日)、10月景気動向指数速報値(7日)、10月機械受注(8日)、7−9月期GDP2次速報(9日)の経済統計のほか、福井日銀総裁の名古屋での講演および記者会見(8日)が注目される。
米国では13日に予定されているFOMC(連邦準備制度理事会)に関心が集中しており、週内は大きな変動が予想されていないが、11月ISM非製造業景気指数(5日)および12月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値(9日)が注目されている。その後の統計として、日本では、12月14日の日銀短観11月調査、27日の11月全国消費者物価上昇率、28日の11月鉱工業生産指数に関心が集中している。

日本経済の改善は株価上昇と不可分の関係を示す見込みである。筆者は8月以降の株価上昇を日本株価の割安修正である一貫して主張してきた。企業の利益水準、長期金利水準、市場心理を踏まえれば、日経平均株価が20,000円まで上昇してもおかしくないことを指摘してきている。
  過去の株価上昇局面との対比から、2006年央から年末までに日経平均株価が19,000円水準にまで上昇することをひとつの目安としてきている。株価上昇の第一波動は5月中旬から10月4日までの約3000円の上昇である。10月4日から10月21日までの調整局面を経て、12月にかけて再び上昇力を強めている。一進一退を繰り返しながらも2006年2月ころまで、上昇の第二波動を形成することになるのではないだろうか。

 株価上昇のペースが非常に速いだけに、スピードに対する調整が生じる可能性は低くないと思われるが、基本的に株価上昇のトレンドが持続することを前提に市場動向を追ってゆくことが必要であると思われる。
  株式市場は全体的に価格がかさ上げされる状況に入っている。PERが相対的に低いセクター、業績の水準が高いセクター、業績の改善スピードが速いセクターの株価が循環的に物色され、全体的に株価水準が上昇するのではないかと考えられる。具体的なセクターについては『金利・為替・株価特報』を参照していただきたいが、為替市場での円安傾向をにらみながら、輸出関連、製造業好調業種と内需主力セクターが交互に相場の主役になる状況が想定される。

 5日に発表された2005年7−9月期法人企業統計では全産業の設備投資が前年同期比で9.6%増加を示した。前年比での設備投資増加は10四半期連続である。季節調整済みの前期比では4.1%の増加となった。製造業の設備投資が前年比で18.7%増加したのに対し、非製造業の設備投資は前年比で5.0%の増加になった。
  設備投資の堅調から、9日に発表される7−9月期GDP2次速報では経済成長率が上方修正される可能性がある。8日発表の10月機械受注についても9月統計が大幅マイナスを示した反動が予想され、比較的高めの伸びが予想されている。

 こうしたなかで、今後強い関心を集めるのが日本銀行の政策対応である。12月27日に発表される11月全国消費者物価指数では、98年4月以来、7年8ヵ月ぶりに前年比上昇率がプラスを記録する可能性が高い。財務省出身の武藤日銀副総裁は、消費者物価上昇率が前年比でプラスに転じても暫くはゼロ金利政策を継続する意向を表明しているが、福井総裁がどのような発言を示すかに関心が集まる。
  短絡的に考えると、ゼロ金利政策を長期間継続したほうが長期金利の上昇も抑制されて経済にプラスであるように考えられるが、この考え方は誤りである。インフレ誘発の政策スタンスが示されれば、長期金利は長期的なインフレ率上昇の予想から大幅に上昇してしまう可能性が高いのである。

 ひとたびインフレを引き起こしてしまうと、経済の不確実性が高まり、経済活動には強い下方圧力が働いてしまう。これらのことは二度にわたる石油危機後のインフレの経験から得られた貴重な教訓である。福井日銀総裁には通貨の番人としての中央銀行マンとして毅然とした対応が求められている。だが、週内に限って言えば、福井総裁から市場を混乱させるような発言が出るとは考えにくい。一般論として、物価上昇率が安定的にプラスを示せば金融政策を変更する方針が語られることになるのではないか。

 米国では経済の基調を判断するいくつかの経済統計が発表される。感謝祭後の個人消費は堅調であることが伝えられている。米国経済堅調のニュースは利益面から株価上昇を支える要因であるが、他方で、一段の金利引上げを示唆する側面もあり、金融引締め強化予想が生じれば株価下落要因になる。
  次回FOMCは12月13日に開催される。筆者はFFレートの0.25%引上げが実施される可能性が高いと考えている。昨年6月以来、13回連続の利上げである。市場の関心は、FOMC後のFRBからのコメントに集中し始めている。利上げが終盤に差しかかっていることを示唆する表現が新たに盛り込まれるかどうかがポイントである。利上げが終了する見通しが広がれば株価は大きく上昇するだろう。

 だが、現状で株価急上昇が生じると、景気が一段と補強される。景気の拡大はインフレ圧力を強化させる要因になる。利上げ終了示唆のコメントは先送りされる可能性のほうが強いように思われる。引き続きインフレに対して警戒スタンスを維持する方針が何らかの形で示されることにとどまる可能性が高いのではないか。
  米国金利引上げ観測が持続する間は、ドルが堅調に推移する可能性が高い。米国経済ソフトランディングの可能性は高く、2006年においては米国株価も上昇する可能性が高いように思われる。

 国内では、小泉政権の「改革」政策の最大の焦点である政府系金融機関改革について、政府案がいよいよまとめられる段階に差しかかっている。筆者は2001年以降、一貫して最大の焦点は「天下り全面禁止」を決定するかどうかであると主張してきた。高齢者の医療費負担増加を決める前に、障害者に対する負担増加を強制する「障害者自立支援法」を成立させる前に、「官僚天下りの全面禁止」を決定すべきであるのは当たり前だ。

 「小さな政府」、「官僚支配の打破」を看板として掲げるなら、「天下り全面禁止」は当然の第一歩である。筆者は小泉政権が「天下り全面禁止」を決定しない可能性が高いと判断している。もし、そうなるなら「小泉改革はまやかし」とする筆者の見解は正しかったことが立証される。小泉政権は財務省の利権拡大を全面的に推進してきた。「小さな政府」、「真の改革」など、もとより目指していなかったことが証明されてしまう。
  筆者の見解が間違っていることを願わずにはいられないが、小泉改革の本質が明らかになる日は確実に近付いている。

2005年12月5日
植草 一秀

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