コラム

今週の金融市場展望(2005年11月29日)

 日本の株価上昇が持続している。筆者は8月8日以降の日本株価上昇を「割安修正」と判断し、2006年央に向けて日本株が大幅上昇を示す可能性が高いことを予測してきた。8月8日までは、小泉政権の閉塞感の強い経済政策運営のもとで、企業の利益水準に比較して株価が割安な状態で推移してきた。その割安状況が8月8日の郵政民営化法案否決をきっかけに、水準修正を始めたと判断したのである。
  株価がどのような意味で割安であるかは、『金利・為替・株価特報』に記述してきた。日本の株価が、株価決定の基本要素である、企業収益、長期金利、市場心理に照らして大幅に下方に乖離した状況に置かれていることを示してきた。

 今週は、国内において、28日に10月商業販売統計、29日に10月鉱工業生産、10月失業率の発表があった。米国では、12月1日に11月ISM製造業指数、2日に11月雇用統計の発表が予定されている。欧州では12月1日にECB(欧州中央銀行)定例理事会が開催され、政策金利の引上げが討議される見込みである。

 28日発表の10月商業販売統計では、10月の小売業販売額が前年比0.3%の減少を示した。8ヵ月ぶりの減少となった。大型小売店販売は前年比2.0%の大幅減少を記録した。一方、29日発表の10月鉱工業生産統計では、前月比0.6%の上昇が示された。同時に発表された予測指数では、11月が前月比4.6%増加、12月が0.6%の増加となっている。
 日本経済は、現在設備投資の増勢に支えられて緩やかな改善を続けているが、個人消費は依然として低迷している。個人消費が勢いを強めるかどうかが、日本経済本格浮上の鍵を握る。

 生産活動を鉱工業生産指数で判断すると、2004年5月以降、1年半にわたり、高原状態の推移を続けてきた。季節調整後の生産指数では103(2000年=100)の水準を超えられない状況が15年間も続いてきた。この生産指数がいよいよ103を上方に抜ける局面が近付いている。12月28日に11月統計が発表されるが、ここで「踊り場脱却」が確認される可能性が高い。12月14日には日銀短観が発表され、日本経済の踊り場脱却が示唆されるか注目される。

 2006年にかけての最大の焦点は、個人消費の基調がしっかりと強化されるかどうかである。その鍵を握るのが株価動向であると筆者は主張してきた。筆者は、日本の株価が2006年にかけてさらに上昇を続ける可能性が高いと判断している。株価上昇が本格化すれば、「株価上昇−景気拡大−金融拡大−株価上昇」の好循環が生まれることになる。
 現在人々が考えている以上の景気浮上が実現してもおかしくはないと考えられる。こうしたなかで、2006年の大きな焦点になるのが、日本銀行の政策である。日銀はかねてより、消費者物価指数が前年比で安定的にプラスに転じたら、量的緩和、ゼロ金利政策を解除することを宣言してきている。消費者物価指数は12月27日発表の11月全国統計で前年比プラスに転じる可能性がある。
 2006年前半は日銀の政策に焦点が当たることになる。政府、財政当局はすでに日銀の金融緩和政策後退に対してけん制する発言を始めているが、2006年前半、どのような論議が繰り広げられ、どのような影響が金融市場に表れるか、十分な検討が必要である。この点についての分析は『金利・為替・株価特報』を参照していただきたい。

 米国では、11月22日に公表された11月1日のFOMC議事録で、金融引締め政策の終了が示唆されたとの報道から、株価がNYダウで10,900ドル台に上昇した。金融引締め終了、景気拡大持続、インフレ回避の理想的な経済推移が見込まれ、株価上昇が強まった。
 だが、筆者は米国の金融引締めが直ちに終了するとは考えていない。経済の基調は依然として強く、FRBのインフレ警戒姿勢はまだ解除された状況からは遠いからだ。同じ議事録のなかには、米国企業の価格転嫁力が強くなっていることも討議されたことが示された。原油価格上昇の影響などを企業の製品価格に転嫁する力が強まっていることが示されたのである。

 米国経済の基調は依然として堅調である。原油価格は一時の急騰状況から大きく変化し、落ち着きを取り戻している。ハリケーンの影響は一過性が強く、また、1000億ドル規模の財政支出追加も検討されており、景気が失速するリスクは低下している。
 12月13日、1月31日、3月28日にFOMCが予定されており、これらのFOMCのなかで2度程度利上げが決定される可能性は依然として高いと筆者は判断している。

 為替市場では、実質短期金利差と経常収支の変化が主要な変動要因になっている。日本の貿易黒字は7ヵ月連続で減少しており、また、日本のゼロ金利は当面持続する可能性が濃厚である。
 だが、一方で米国も経常収支の悪化は続いており、ドルの上昇力を弱める要因が存在している。また、外国資本の本邦資産取得の勢いは依然として強く、これが円買いを通じて、円支持要因として作用している。円ドルレートは予想通り1ドル=120円に差しかかる程度の円安傾向を示しているが、当面、緩やかなドル堅調の地合いは継続が見込まれる。

 日本の株式市場の地合いは非常に強いと考えられる。そのなかで、上昇の主役は循環的に変化してきている。具体的な投資戦略については、『金利・為替・株価特報』に記述するのでぜひご参照いただきたい。

2005年11月29日
植草 一秀

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