コラム

今週の金融市場展望(2005年11月22日)

 今週の金融市場は、内外ともに大きな経済指標の発表が乏しく、市場変動のリズムをどのように読むのかの神経戦となる公算が高い。日経平均株価は、10月21日のザラ場安値13,000円割れから1ヶ月で、1,800円の急騰を記録した。8月8日以降の日本株上昇の基調がより強まってきている。
  筆者は、日本の株価が割安の修正局面にあると判断しており、2006年央にかけて、本格上昇を継続すると予測してきている。日経平均株価の高値目標は16,000円から19,000円である。株価上昇が本格化すれば、連動して経済も浮上する。株価上昇が「原因」となり、「景気」拡大が実現するシナリオを想定している。

 しかしながら、相場には相場特有のリズムが存在する。呼吸同様、「吸う」ことと「吐く」ことが繰り返されなければ長続きはしない。日本株市場は若干過熱しており、小休止が入ってもおかしくはない局面である。主力セクターが小幅調整に入り、陰に回っていた個別材料株が若干の躍動を示すことも考えられる。

 米国でバーナンキ次期FRB議長が11月15日(火)に上院公聴会で証言した。持論の「インフレ目標」導入には慎重なスタンスを示し、逆にグリーンスパン路線を忠実に踏襲し、インフレに対して厳格に対応することが示された。
  原油価格の下落とバーナンキ証言、さらに10月物価統計の結果を受けて、米国長期金利は小幅低下に転じた。日本の長期金利は金利の国際裁定により、米国長期金利に連動して小幅低下した。株価上昇、金利上昇の基本方向とは逆の小幅調整が市場で観察される可能性があろう。

 11月15日(火)、16日(水)に発表された10月米国物価統計は、予想通り、物価の落ち着きを示すものとなった。10月にインフレ懸念はピークを示したが、その後、緩やかに懸念は後退している。株式市場では安心感が広がり、NYダウは10,700ドル台にまで上昇した。
  米国経済の先行きについて、どのような前提を置くかが市場展望の第一の出発点になる。筆者は従来から述べてきているように、2006年前半までFRBによる金利引上げ政策が持続し、FFレートは4.50%ないし4.75%まで上昇すると考えている。今後のFOMCは、12月13日、1月31日、3月28日に予定されているが、バーナンキFRB議長のデビュー戦となる2006年3月28日のFOMCで、FFレートが4.50%に引き上げられる可能性が高いと考えている。

 米国経済失速のリスクファクターとしては、(1)ハリケーンの後遺症、(2)金利引上げによる経済のオーバーキル、(3)住宅価格下落に伴う住宅投資・個人消費の急減速、の三つをあげることができる。これらのなかで、ハリケーンの後遺症と金利引上げによる景気失速のリスクはそれほど高くないと考えている。
  住宅価格動向とそれに連動する住宅投資動向については、今後の動きを注視する必要があるが、現段階では、大きな落ち込みは観察されていない。ハリケーンについては、逆に1000億ドル規模の財政支出追加が見込まれており、景気を支えることが予想される。
  結局、米国は2006年にかけて、インフレを回避しつつ、景気失速を免れるとの「ナロウパス」通過に成功するのではないかと考える。NYダウは筆者の予想通り、9,800ドルから10,800ドルのレンジ内の変動を続けているが、金融引き締め終了とともに、レンジを抜けて再び上昇する可能性が高いと考えられる。

 日本では、今後の生産指数(29日)、物価(25日)、貿易統計(24日)が注目される。日本の貿易黒字は減少を続けており、円安傾向を支援すると考えられる。10月全国コアCPIは、前年比0.0%が予想されているが、プラス数値の発表となる可能性もある。そうなると、98年4月以来の上昇となり、日銀の政策変化の憶測が広がり、長期金利が再び上昇傾向を示す可能性がある。
  29日発表の10月鉱工業生産指数は経済産業省の予測指数では2.4%の上昇が見込まれているが、こうした高い伸びが示されると、日本経済の「踊り場脱却」がついに現実化してゆくことになる。
  株価動向、生産指数、などを踏まえて、日本経済が再浮上を始める可能性について十分な想定が必要である。

 為替市場では、金利差要因、日本の経常収支黒字減少を背景にした円安傾向が維持される見通しだが、日本の量的緩和政策解除の方向感が物価統計などをきっかけに微妙に変化することも予想される。また、欧州では、2年半2.0%に据え置かれてきた政策金利が12月1日の定例理事会で引き上げられる可能性が浮上している。一時的なドル反落要因になりやすいので注意が必要である。

 中期的な日本株上昇波動のなかでの、息継ぎとしての株価小幅調整の可能性を踏まえ、押し目買いの基本スタンスで日本株市場に対応すべきであると考える。押し目は形成されても、深押しにはならない可能性が高い。8月8日からの株価上昇は10月4日まで、約一月半継続した。10月21日を起点とすると、12月月初まで上昇が継続してもおかしくはない。押し目を丹念に拾う戦術が有効と考える。
 国内長期債市場では、一時的な金利低下局面はあるにしても、中期的にはすでに金利上昇の波動が形成されつつあり、金利低下局面での債券売却方針も念頭に入れてゆくべきであろう。
  内外市場ともに、休日をはさみ、相場は小休止を入れる局面を迎えているが、相場の呼吸のタイミングに合わせて、次の中期波動をどう読むかを考えるべきタイミングである。

2005年11月22日
植草 一秀

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