コラム

今週の金融市場展望(2005年8月1日)

今週の金融市場は、基本的に先週までの流れを継続する公算が高い。米国では、「インフレ無き成長持続」のシナリオがいまのところ維持されており、NYダウは3月高値10,940ドル更新を意識した市場展開が継続しそうである。

国内では、週初にも11,966円の3月高値更新を達成する可能性があり、引き続き戻り高値を模索する展開が予想される。国内での最大の関心事項は、郵政民営化法案の行方である。法案否決となれば、解散総選挙が実施される可能性が高く、市場の関心は一気に選挙後の政治体制がどのようなものになるのかに向かうことになる。

最近の日本の株価変動は、米国株価との強い連動関係を保持している。5月から8月にかけて、米国株価が戻り歩調をたどった背景は、抑制されたインフレ指標の発表が続いた一方で、経済成長持続の統計数値が発表され続けたことにあった。6、7月に発表された米国5、6月分消費者物価上昇率はそれぞれ前月比-0.1%、+0.0%だった。他方、先週末、7月29日に発表された2005年4-6月期GDP実質成長率は年率3.4%となり、米国経済の堅調な推移を確認するものとなった。

7月20日のグリーンスパンFRB議長の議会証言では、米国金融引締め政策が今後も継続されることが示唆されたが、このことを市場はすでに予測してきている。7月27日に米国地区連銀経済報告書(ベージュブック)が発表され、インフレ懸念は一時に比べて後退したが、原材料価格などの上昇に対する警戒は緩められない考えが改めて示された。

米国の金融引締め政策が今後も続き、インフレ警戒感を強める物価統計が今後示される可能性があり、先行きに対する警戒感を解くことはできないが、足元では、「インフレ無き成長持続」の望ましい状況が継続しており、これが、5月以降の株価上昇を支えている。

8月9、10日開催のFOMCでは、昨年6月以来、10回連続となるFFレートの引上げが決定される可能性が高い。だが、このことを市場はすでに織り込んでいると考えられる。当面の焦点は8月16日に発表される、7月消費者物価上昇率である。直近2ヶ月連続で抑制された数値が発表されたことから、逆に高めの数値が発表される可能性があり、統計数値に最新の注意が求められる。

2005年末にかけての展開としては、長期金利の緩やかな上昇を背景に、住宅価格や住宅投資、さらに個人消費に減速の変化がはっきり現れてくるのかどうかが注目される。景気減速が明確化すれば、堅調なドルの上昇力は鈍ることになるだろう。

日本の株式市場は、5月以降の米国株価上昇を基本背景として5月以降の上昇を継続している。国内的には、日本経済の底堅さを示す経済統計が株価上昇を支えている。7月29日発表の6月鉱工業生産指数は、前月比+1.5%の増加を示した。5月の-2.5%の反動が大きな背景であるが、強めの経済指標が個人や企業経営者の心理を支える効果を無視できない。

失業率も5月の4.4%から4.2%に低下しており、当面は緩やかな景気楽観論が市場の底流を流れることになろう。ただし、企業の在庫・出荷循環では、弱い在庫調整が生じる可能性が高く、踊り場を明確に上方に抜け出してゆく展望はまだ開けていない。

8月12日に日本の4-6月期GDP成長率統計が発表される。プラス成長が持続すれば、日本の景気楽観論が補強されることになる。米国物価統計をにらみながらも、当面、戻り高値を更新する展開が持続する可能性が高い。

目先の最大の注目材料は、郵政民営化法案の決着である。参議院本会議採決において、自民党から18名以上の反対票が投じられれば、法案は否決される。その場合には、衆議院の解散総選挙が実施される可能性が高い(郵政民営化法案についての評価は、『金利・為替・株価特報』2005年7月16日号および8月1日号を参照されたい)。

政局の混迷で株価が下落するのではないかとの見方があるが、重要なのは、解散前と解散後とを比較して、どちらの方が日本経済の中期にとってプラスなのかという点である。小泉政権が経済浮上を重要政策課題として位置付けずに、日本経済が崩壊寸前の状況に追い込まれたことを踏まえれば、小泉政権の退場は、日本経済にとっての朗報である。政局で株価が下落する局面があれば、投資の優良なチャンスとなることを頭に入れておくべきであろう。

企業収益は大幅に増大しており、日本政府が力強い経済浮揚の政策を明示すれば、株価本格上昇を実現させることは可能である。小泉政権はこの方針を示していないが、新しい政権が明確な経済強化優先の政策を示せば、株価本格上昇の可能性も見えてくる。政局の転換は非常に大きな意味をもってくる。

為替市場では、先週のコラムにも記述したように、ドル堅調を支える要因が多いことに留意するべきである。米国の短期金利が引き続き引上げられてゆく一方で、欧州では、引下げの可能性があり、また、日本の短期金利引上げの可能性はいまのところ存在しない。米国でのインフレ懸念の強まり、米国の景気減速観測の広がりが確認されるまで、ドルは底堅い動きを継続する可能性が高い。

郵政民営化法案採決の行方と8月16日の米国7月消費者物価統計が当面の焦点であり、それまでは、先週までの市場の地合いを基本的には受け継ぐ可能性が高いと考えられる。

2005年8月1日
植草 一秀

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