コラム

今週の金融市場展望(2005年7月19日)

今週の金融市場は、先週発表された米国経済指標が金融市場の警戒感を緩和させるものであったことを受けて、「経済楽観」の見通しを軸に変動することになると考えられる。20日(水)にグリーンスパンFRB議長の議会証言が予定されており、今後の金融政策についてどのような方向感が示唆されるかが注目される。国内では、大きな経済指標の発表は予定されておらず、米国市場の動向を反映した市場推移が予想される。

先週14日(木)に発表された米国6月消費者物価統計は、市場の事前予想を大きく下回った。市場の事前予想は、全品目が前月比0.3%上昇、コア指数(食品、エネルギーを除く)が前月比0.2%上昇だったが、現実は、全品目が前月比0.0%、コア指数が0.1%上昇だった。また、15日(金)に発表された米国6月卸売物価指数も事前予想を下回った。事前予想の全品目前月比0.4%上昇、コア指数前月比0.1%上昇に対して、現実は、全品目前月比0.0%、コア指数前月比0.1%低下となった。

6月にかけて原油価格が上昇し、この影響が物価統計にどのように反映されるのかが懸念されていたが、発表数値は、市場の予想以上にインフレが抑制されていることを示すものとなった。この安心感から米国株価は上昇基調を強め、NYダウは10,600ドル台を回復し、本年3月以来の高値を記録した。

また、先週は米国経済ファンダメンタルズに関連した重要統計も発表された。ひとつは5月分米国貿易赤字が前月比で2.7%減少したことである。1−5月の累計では、前年同期で20.3%増加しており、過去最大の貿易赤字のペースが続いているが、5月単月では小幅の減少となった。

他方、米国政府は、2005会計年度(2004年10月−2005年9月)の米国財政赤字の改定見通しを発表した。この見通しによると、2005年度の財政赤字見通しは、3330億ドルとなり、2月時点での見通し4270億ドルを940億ドル減額修正した。減額修正の最大の要因は税収の増大である。米国経済の拡大により、税収が大幅に増大しており、このことが財政収支改善をもたらしている。

グリーンスパンFRB議長が主導する金融引締め政策は、米国の双子の赤字拡大傾向のなかで、内需抑制による貿易収支改善をも重要な目標として実施されているものと考えられる。米国財政収支に明確な改善傾向が示されることは、FRBの金融引締め負担を軽減するものでもあり、今後の金融政策に与える影響が注目される。

今週、20日(木)午前10時(現地時間)から、グリーンスパンFRB議長の議会証言が行なわれる。米国経済の基調は依然として強く、FRBの金融引締め政策の早期終結を示唆する発言は示されない可能性が高いが、この点がひとつの注目点ではある。予想される発言内容としては、(1)米国経済の基調は依然として強い、(2)足元のインフレはしっかり抑制されており、中長期のインフレ期待も十分抑制されている、(3)金融政策は依然として緩和された状況にあり、緩やかなペースで金融緩和が解除されてゆく見通しである、ことが示されることになるのではないか。

直近発表された物価統計がインフレ抑制を強調するものとなっているが、他方で原油価格は史上最高値近辺で推移しており、原油価格上昇と米国インフレ懸念について、どのようなニュアンスの発言が示されるのかが大きな注目点である。もうひとつの大きな注目点は、米国財政収支改善の方向感について、この動向を歓迎する発言が示されるのかである。双子の赤字問題に対する改善認識は、今後の金融政策への負荷を軽減することを意味し、注意を怠れない。

日米株式市場ともに、5月以降の株価反発局面にある。先週発表の米国6月物価統計がインフレ懸念を後退させるものとなったために、株価が戻り高値を記録して反落に転じるタイミングは先送りされる可能性が高まっている。当面株価は堅調に推移し、3月高値を更新する可能性を探る展開が持続しそうである。

日本では、8月13日に会期末を控えている通常国会での最大の案件である郵政民営化法案の決着に関心が集まっている。参議院本会議で自民党から18人の反対票が出れば、郵政民営化法案は否決される。

筆者は、日本で今後「真の改革」を実現してゆくためにも、郵政民営化法案を否決し、政局の大転換を図ることが望ましいと考えるが、郵政問題がこれから最大のヤマ場を迎える(詳しくは『金利為替株価特報2005年7月16日号』を参照されたい)。仮に法案が否決される場合、短期的には政局混迷の見通しから、金融市場も若干の波乱に見舞われる可能性があるが、小泉政権の経済政策が、これまで日本経済を崩壊の危機に追い込み、また健全な回復を大幅に遅らせてきたことを考えれば、政局大転換は日本経済にとって、明らかに朗報である。水面下での政局をめぐる動向から目を離せない。

米国経済の堅調な推移から、米国長期金利は小幅上昇を示している。世界的な長期金利大幅低下の動きは一巡したと見ておくべきであろう。日本経済の先行きについては、依然として不透明感が残存しており、日本の長期金利は米国長期金利の影響を受けつつ、しばらく強含み横ばいの動きを続けるものと考えられる。

為替市場では、引き続き米国金融引締め継続観測を背景にドル堅調の地合いが継続するものと考えられる。日本で、郵政民営化法案が否決される場合、一時的に円売りが加速する可能性もある。大幅な変動は予想されないが、しばらくの間、ドル堅調の基調を想定しておくべきであろう。

2005年7月19日
植草 一秀

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