コラム

今週の金融市場展望(2005年7月11日)

先週の株式市場は、予想通り一進一退の推移を示した。今週は、先週末の米国株式市場の株価反発の流れを受けて堅調にスタートするものと見込まれるが、11,900円台の3月高値に接近するにつれて、高値警戒感が強まることになろう。米国では14日(木)の6月消費者物価指数に関心が集まる。株価は先週末の流れを受けて強含みの展開が予想されるが、原油価格が引き続き高値圏内で推移しており、インフレ警戒感は払拭されず、上値の重い推移が持続するだろう。

先週5日には、郵政民営化法案が衆議院で採決された。法案は233対228の5票差で可決された。自民党議員があと3名反対に回れば法案は否決されていた。国会や自らが所属する政党の総意を軽視するという、議会制民主主義の根本原則を踏みにじる独裁的行動を続けてきた小泉首相の政治手法に対する反発が今回の採決結果に表われた。世論調査においても、小泉政権の政治手法に対する風圧が徐々に高まる傾向が示され始めている。小泉政権はいまのところ、権力迎合のマスコミ論調により何とか支えられているものの、政権発足以来最大の苦境に直面していることは間違いない。

8月13日の会期末に向けて、政局大変動の可能性が高まることが予想される。自民党内の郵政民営化法案反対派勢力は、結束を強めつつあり、法案否決の可能性が高まっている。参議院で法案が否決された場合、当然のことながら本来は小泉政権が内閣総辞職すべきである。だが、小泉首相は解散総選挙の暴挙に打って出る可能性が高い。自民党は急遽、総裁を交代して総選挙に臨む可能性もある。政界再編の可能性も生じる。日本経済混迷長期化の主因である小泉政権の終息は基本的に歓迎すべき変動であり、中期的には日本経済にフォローの風が吹くことになると考えられるが、短期的には、政局混乱が市場の波乱要因になることも想定される。

先週、英国時間の7日午前、英国ロンドンで同時多発テロが発生した。テロそのものは許されざる犯罪であるが、背景にはイラク軍事侵攻などの米国の中東での強硬姿勢がある。イランでは、反米勢力が大統領選挙で勝利しており、イスラム社会における反米感情には根強いものがある。米国の力による世界支配の姿勢が維持される間、主要国は常に大規模テロの標的にされる状況が持続することが予想される。小泉政権は米国のブッシュ政権に完全に追従しており、日本国内でのテロ発生、イラクのサマワでの自衛隊への攻撃などのリスクが高まっている。

14日に発表される6月米国消費者物価上昇率は、6月の原油価格急騰の影響を受けて前月比で0.2%から0.5%のプラス数値となる可能性が高い。自動車の値引き販売が強化されたことが価格上昇を抑制する要因として想定されているが、市場が関心を寄せるコアの物価上昇率(エネルギー・食料品を除く物価上昇率)がどの程度の上昇を示すかが注目点である。

FRBの金融引締め政策の帰趨が現在の金融市場の基調を決定する最重要の要因となっており、当面は14日発表の米国消費者物価上昇率が最大の注目材料である。金融引締め強化の予想が広がれば株価は戻り高値を記録して反落に転じよう。物価動向に警戒感が広がらなければ3月高値更新をうかがう展開になることが予想される。

日本の株式市場は、基本的に米国株式市場の変動を反映して推移する可能性が高く、米国で当面、物価警戒感が広がらなければ、3月高値更新の可能性も生じることになる。

他方、欧州経済は経済成長率の低迷と失業率の上昇が各国で政治問題化し始めており、ECBによる利下げ政策も視界に入り始めている。5月29日のフランスでのEU憲法批准をめぐる国民投票での否決に連動しユーロは急落したが、その後、反動で小幅の反発を示している。だが、米国短期金利が引き続き引上げの方向にあることから、しばらくユーロは下落しやすい地合いを継続することになるだろう。ドルは円に対しても強含みの推移を続けているが、今後、(1)米国景気減速感の広がり、(2)米国インフレ懸念の強まり、(3)中国人民元切上げ観測の浮上、のいずれかをきっかけに反落に方向を変化させることになるだろう。それまでの間は、引き続き堅調に推移することが予想される。

内外の長期金利はしばらく落ち着いた動きを続けることになるだろう。日本経済は当面横ばいの動きを続けると見られ、長期金利を大きく変動させる要因とはならない。米国でインフレ懸念が急速に強まれば、米国長期金利が上昇し、日本の長期金利も上昇圧力を受ける。

当面は米国物価動向が最重要の注目材料だが、8月中旬にかけては、日本の政局に重大な関心が寄せられる。参議院での郵政民営化法案否決の可能性とその場合の政局変動につき、十分なシミュレーションが必要である。

以上

2005年7月11日
植草 一秀

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