コラム

今週の金融市場展望(2005年6月27日)

『金利・為替・株価特報』2005年6月16日号では、「5.投資戦略」として、『ドル・株価・長期金利の方向転換』と題して、5月から6月にかけての日米の株価の戻り歩調が、再び反転、下落基調に転換する警告を発した。6月発表の5月分米国物価統計は5月にかけての原油価格等の下落基調を受けて、インフレ懸念を沈静させるものになること、米国金融市場は、米国の金融政策の先行きに対する見通しの変化を基軸として変動していることを述べてきた。日本の株式市場は、米国市場との連動関係を強く有しており、米国株価の戻り歩調に合わせて、日本の株価も戻り高値を模索する展開になるだろうことを予測してきた。

だが、当社としては、株価戻り歩調のその先の変化を読み抜くことが肝要であることを強調してきた。5、6月のインフレ懸念後退、日本の比較的良好な経済統計の発表を受けて、日米の株価は5月にかけての株価下落を6月には取り戻す反発局面を迎えるが、7、8月にかけては、再び株価反落の調整局面に直面してしまう可能性を指摘してきた。

先週は、前半を中心に株価の戻り高値を模索する展開を示したが、米国市場がいち早く、原油価格高騰の影響を先読みする市場反応を示すことになった。6月29日には、米国でFOMC(連邦公開市場委員会)が開催される。昨年9月以来、9回連続となる利上げが実施されることが予想される。これまで同様、0.25%幅での利上げが予想される。6月1日にダラス連銀のフィッシャー総裁が、米国の今回の利上げを野球にたとえて、いよいよ9回の大詰めを迎えているとのコメントを発したが、この見解は現実を正確に示すものではないと考える。

米国金融政策の引締め基調は、2006年前半まで持続するものと見ておくべきだ。『金利・為替・株価特報』2005年6月16日号のタイトルを、「踊り場にあるのは米国金融引締め政策」としたが、5、6月に後退したインフレ懸念は、7、8月にかけて再び強まり、米国の金融引締め政策に対する懸念も、もう一度悪化する公算が高いと当社では見ている。

この意味で、今週の第一の注目点は、29日のFOMCを受けて、どのような施策が打ち出され、どのようなコメントが発表されるのかである。米国株式市場が先週週末にかけて、急落したことを受けて、FRBは市場に過度の刺激を与える表現を避けるものと考えられるが、基本的には、従来よりは、インフレ警戒姿勢を若干強めることを示唆するコメントを発表することになるだろう。

原油先物価格が先週1バレル=60ドル台を記録し、インフレ心理が強く刺激された。原油市場には、投機資金も流入しており、どこまでが実需に基づく価格高騰であるかは判別が難しく、高値波乱局面特有の価格乱高下も予想され、一時的に価格下落、インフレ懸念後退の局面も生じるかもしれない。その局面では、株価が急反発することも予想されるが、重要な点は、基調としての市場の方向がどちらに向かうかである。『金利・為替・株価特報』で詳細に分析してゆくが、基本的には、7、8月を要警戒期として捉えておくべきではないかと考える。

国内では、29日に5月分の鉱工業生産指数が発表される。4月の前月比1.9%の大幅上昇のあと、5月は2%弱の生産大幅減少が予想される。当社では、日本の鉱工業生産が本年1月にピークを記録したとの判断を有しており、日経新聞などが強く主張している年央からの景気再浮揚説と対照をなしている。5月鉱工業生産指数が大幅下落となれば、景気再浮揚説は若干の見直しを迫られることになるのではないか。

日本経済の現況、先行きを判断する上で重要であるのが、7月1日発表の日銀短観6月調査である。3月と比較して企業の景況感は概ね横ばいで推移してきたと考えられる。注目点は、先行きの景況感本格回復の姿が示されるのかどうかである。当社では、日本経済が天井圏内での推移を続けており、年後半以降、緩やかな下り坂に向かうリスクが高いと見ているが、現実にはそうではなく、年後半の景気本格浮揚の姿が浮かび上がるのか、注目される。

同時に、企業の設備投資計画も注目される。前回3月調査では、全産業全規模合計の2005年度の設備投資計画は、土地投資を除きソフトウェアを含むベースで、1.1%増と、昨年度の7.3%増から、伸び率が急低下することが示された。今年度の設備投資計画がどの程度上方修正されるのかにも、関心が寄せられる。

また、景気の循環的なサイクルとの関連では、鉱工業生産統計のなかの製品在庫率指数同様に、日銀短観の製商品在庫判断DIも注目点である。

これまで、『金利・為替・株価特報』で繰り返し述べてきたように、2005年の世界の金融変動の縦軸を織り成しているのは、米国金融政策についての見通しである。インフレ懸念が強まり、金融引締め強化の予想が生じれば、経済に対する先行き警戒感が強まり、株価も下落しやすくなる。長期金利も上昇しやすくなる。米国インフレ率の上昇は、ドル下落要因になる。

長期金利の方向感に大きな変化は生じていいないが、金利低下の流れはとりあえずの終止符を打った可能性が高い。為替市場では、5月29日のフランスでのユーロ憲法批准の賛否を問う国民投票における否決以来、ユーロ下落が加速した。また、欧州では政策金利の低下観測も広がっている。このなかで、米ドルは堅調に推移している。当面、ドルが急落する要因は見当たらないが、米国インフレ懸念の強まり、先行きの米国経済減速観測の浮上、中国人民元の切上げ観測浮上などを契機に、基調がドル弱含みに切り替わる可能性が高いと考えられる。

いずれにしても、7、8月の米国におけるインフレ懸念強化の局面を控え、慎重に先行きを見る必要があると考えられる。

2005年6月27日
植草 一秀

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