コラム

今週の金融市場展望(2005年6月20日)

先週発表された5月分米国物価指標は、米国でのインフレ懸念をやや後退させるものとなった。14日発表の卸売物価指数は前月比0.6%の下落、前年比で3.5%の上昇となった。エネルギー・食料を除くコアの変化率は前月比で0.1%の上昇となった。15日発表の消費者物価指数は、前月比0.1%の下落、前年比で2.8%の上昇となった。コアの変化率は前月比で0.1%の上昇となった。

全体として、インフレ懸念を後退させる統計数値となった。これらの指標を受けて、米国株価は小幅ながら、2003年3月以来の7日続伸を記録した。NYダウは3月18日以来、ほぼ3ヶ月ぶりの高値で取引を終了した。

日本の株式市場も、米国での7日続伸を受ける形で、日経平均株価が6日続伸を記録し、11,514円と4月14日以来の11,500円台を回復した。

『金利・為替・株価特報』で昨年11月以来、一貫して記述してきたように、金融市場変動の基軸を定めているのが米国金融政策である。グリーンスパンFRB議長は米国の双子の赤字問題を念頭に入れて、確固たる信念の下に昨年6月以来、利上げ政策を維持している。米国金融引締め政策がいつまで、そしてFFレートがどの水準に達するまで維持されるのかが、最大の焦点である。

6月発表の5月分米国物価統計は金融引締めの加速懸念を後退させるものとなった。また、9日のグリーンスパン議長の議会証言では、米国経済の急速な減速懸念もとりあえず除去された。インフレ懸念と景気急減速懸念の二つが後退したことによって、株価に上方圧力が生じている。

日本の株式市場が米国の株式市場に連動する傾向を強めていることも、『金利・為替・株価特報』で論じてきたことであるが、予想通り、日本の株価は米国市場に連動して上昇を示している。

政府は、6月15日の6月分月例経済報告で景気の基調判断を引上げた。7月3日の東京都議会議員選挙向けに、経済が好調に推移している印象を作り出そうとしていることがその背景であると考えられる。

今週は、先週の流れを引き継ぎ、日米株式市場ともに株価の戻りを試す展開が続くものと思われる。米国ではFOMCが6月29日に、日本では日銀短観6月調査の発表が7月1日に予定されており、今週は大きな市場変動材料が多くない。日米市場ともに、株価連騰後であること、原油価格が高値を更新しつつあることから、週の半ばでの小休止が予想されるものの、基調としては、戻り高値を模索する展開が持続するものと予想される。

問題は、現在の株価上昇の行く先をどう見るのかである。4、5月の株価調整後、3月の高値更新、持続的上昇に向かうのか、それとも、戻り高値記録後、反落してしまうのか、の見極めが重要である。この点については、『金利・為替・株価特報』で詳細に分析してゆくこととする。

為替市場では、やはり『金利・為替・株価特報』で予想してきたように、3月から6月にかけてドル堅調で推移してきた。6月29日のFOMCでも0.25%の利上げが予想され、この米国金利上昇観測がドル堅調の基本的背景をなしている。しかし、今後、米国の双子の赤字問題にもう一度焦点が当てられる局面、米国の景気減速観測が広がる局面、米国のインフレ懸念が再び強まる局面を境に、ドルが下落基調に転じる可能性がある。今週の動きではないと思われるが、短期と中期とはっきりと区別して予測を立てる必要がある。

日米の長期金利は先々週にかけて大幅に下落したが、短期トレンドを転換したと考えられる。原油価格などの国際商品市況の動向にもう一度細心の注意を払ってゆく必要がある。

株式市場での銘柄選択に際しては、『金利・為替・株価特報』に毎号紹介している参考三銘柄などをも参考に、短期での確実な利食いを目指した、銘柄の吟味が引き続き重要である。

政局に影響を与える事項としては、郵政民営化法案の取扱いが第一の焦点だが、今週は、もうひとつの大きなテーマとして、取扱いが定められていない小泉首相の靖国参拝問題に関連して、重要な行事が予定されている。20日の日韓首脳会談でこの問題についてどのようなやり取りがなされるのかが注目される。小泉首相は、2001年の自民党総裁選挙に際して、「いかなることがあろうとも、必ず8月15日に靖国神社に参拝する」と明確な公約を示して以来、一度も8月15日に靖国神社を参拝していない。2005年に靖国参拝をどうするのかに内外から強い関心が寄せられている。内外が注目するこのような重要な問題についての内閣総理大臣の言行不一致に対しては、当然のことながら、批判も噴出している。

2005年の金融市場のハイライトは年後半の経済金融変動にあると考えられる。この点については、是非、『金利為替株価特報』をご参考にしていただくようお願い申し上げます。

2005年6月20日
植草 一秀

コラム一覧
2005/12/31 弊社ホームページ閲覧の皆様へのお知らせ
2005/12/31 『金利・為替・株価特報』掲載株式投資参考銘柄の株価推移一覧表掲載
2005/12/20 今週の金融市場展望(2005年12月20日)
2005/12/12 今週の金融市場展望(2005年12月12日)
2005/12/07 お知らせ
2005/12/06 『金利・為替・株価特報』掲載株式投資参考銘柄の株価推移一覧表掲載
2005/12/05 今週の金融市場展望(2005年12月5日)
2005/11/29 今週の金融市場展望(2005年11月29日)
2005/11/22 今週の金融市場展望(2005年11月22日)
2005/11/17 『金利為替株価特報』ご購読の皆様へ(2005年11月17日)
2005/11/14 今週の金融市場展望(2005年11月14日)
2005/11/07 今週の金融市場展望(2005年11月7日)
2005/10/31 今週の金融市場展望(2005年10月31日)
2005/10/24 今週の金融市場展望(2005年10月24日)
2005/10/17 今週の金融市場展望(2005年10月17日)
2005/10/11 今週の金融市場展望(2005年10月11日)
2005/10/03 今週の金融市場展望(2005年10月3日)
2005/09/27 今週の金融市場展望(2005年9月27日)
2005/09/20 今週の金融市場展望(2005年9月20日)
2005/09/12 今週の金融市場展望(2005年9月12日)
2005/09/06 『金利・為替・株価特報』掲載株式投資参考銘柄の株価推移一覧表掲載
2005/09/05 今週の金融市場展望(2005年9月5日)
2005/08/29 今週の金融市場展望(2005年8月29日)
2005/08/22 今週の金融市場展望(2005年8月22日)
2005/08/15 今週の金融市場展望(2005年8月15日)
2005/08/12 『植草国際政経塾』開催のお知らせ
2005/08/09 今週の金融市場展望(2005年8月9日)
2005/08/01 今週の金融市場展望(2005年8月1日)
2005/07/25 今週の金融市場展望(2005年7月25日)
2005/07/19 今週の金融市場展望(2005年7月19日)
2005/07/11 今週の金融市場展望(2005年7月11日)
2005/07/04 今週の金融市場展望(2005年7月4日)
2005/06/27 今週の金融市場展望(2005年6月27日)
2005/06/20 今週の金融市場展望(2005年6月20日)
2005/06/13 今週の金融市場展望(2005年6月13日)
2005/05/30 不動産稲門会創立10周年記念パーティーで講演をしました
2005/05/17 GDP統計(5月17日発表)について
2005/05/10 植草一秀が巻き込まれた事件について